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乱調の美

結婚五年目。妻である美代の変化に気づいた伊藤忠は、旧友である長沼との再会の場を差し出す。戸惑いながらも誘いに応じた美代が、その夜に見たものとは――。すれ違いの中で揺れる心と、変わってゆく夫婦の形を描く短編。

黒、赤、青

作家である太田英子と鮎川雅史は、亡き作家である加藤一の遺稿を整理するために、とある温泉旅館に宿泊する。英子は加藤の随筆に何物かの影を覚えるようになり……。作家と作品を巡る純文学短編

ブルーに似る?

休日の早朝に、眠れずに目覚めた坂本由香は、貴重な休日の過ごし方から、恋人である井口大助との感覚の違いを思い出す。午前四時が夜か朝か。煙草の煙は白か青かそれとも紫か……。独りの時間と寂しさを描いた純文学恋愛短編

夜の縁

井口大助は、仲直りをしていない恋人である坂本由香とフェリー旅に出た。月日の流れや環境の違いが何かが変わるだろうと信じて。恋人達の微妙な感覚の違いと、二人の距離を描く短編

薄氷の下は

大学生である西田昴は、ストーカーの影に怯える持田茜を家に招く。友達である二人は互いの理性だけを信じる薄氷の上に立っている関係だったが……。2024年太宰治賞に投稿した作品。一次選考落ち。

割れた唇

18歳で成人を迎える高校三年生のあたしは、受験勉強を勤しむ石田との会話に揺れる。恋と将来、責任の重さを前に戸惑う心を描いた青春短編。

例外の定食

二日連続で同じメニューを作らない主義の唯が、ある日同じ料理の夕食に作った。俺はそのことに違和感を覚えるが全然解決の糸口は見えず……。交際している男女の関係を描く恋愛短編

過ち

バーで働くきみは客であり友達でもある武藤から、深山撫子との仲を取り持ってほしいと頼まれる。運命と友情と恋愛を描く恋愛短編

誠に勝手乍ら

金曜日の二十一時の純喫茶広瀬は、大学生の孫である広瀬渉がコーヒーを淹れる。私は仕事の疲れを癒すように足を運び、一息を入れる。働くことと休むことを描く、社会人と大学生の交流を年の差恋愛短編

固執

きみは友達である高宮から、共通の知り合いである林のことを話される。友情と恋愛との間で揺れ動く男女の関係を描いた二人称短編。

真夜中の会合

佐藤は仕事終わりに酒を飲んだある夜、終電で終点まで寝過ごしてしまった。帰ろうにも帰れず途方に暮れていると、駅員である内田と出会う。上に立つ者、下で働く者の関係を描く短編。