最近読んだ本の話

 

昨年から色々な本を読もうという意識を働かせておりました。定期的に最近読んでいる本の話をしても良かったのですが、定期的にしてしまうと定期的に読む必要が生じてしまいますので、それは純粋に読んでいないのではないか? という意識が働いてしまいます。

アウトプットを前提とした読書が悪いというわけではなく、仕事とかビジネスに関係のない状態で読みたいなぁ……という意識の表れです。

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十二の恋の物語

フランス文学です。より厳密に書きますと、中世フランスの物語詩です。同世代の作品ですと、「トリスタン・イズー物語」があるといえるでしょうか

物語と恋愛は今では密接な繋がりがあり、恋愛を扱った物語を列挙すれば沢山の物語が挙げられることでしょう。神話の時代まで遡ることも容易です。

物語と恋愛の関係を、フランス文学に見た時、一体いつ・どこで生まれ、どのように発展していったのでしょうか。その疑問に対する一端の答えが、本書には見受けられます。

本書に掲載されております十二の物語は、一人の人間、一つの地に根差した物語ではありません。何人もの登場人物の恋愛を、どこかの地で起きた恋愛を詩という形で残したものです。

分かりやすく、簡潔な表現で語られる数々の物語。

一人の人間が一人の人間を愛するのに生じるであろう心理描写は、ほぼありません。短編物語詩という形式ゆえかもしれませんし、中世という時代ゆえ「その状態」を表す表現が、まだ見つかっていないゆえかもしれません。

物語における登場人物の心理描写がなかった、時代、手法が確立されていなかった作品として見ることも可能なのかもしれません。

登場人物が恋に落ち、結ばれる。

そのシンプルな筋書きを伝えるための詩。

中世フランス文学を知るためにも、フランス文学のおける「恋愛」がどのように生まれたのか知るためにも、本書を読んで良かったと思います。

「古典」を読む意味を思い出しました。

 

トリスタン・イズー物語

「トリスタンとイザベル物語」と書いても良かったのですが、僕はこの作品を、上記の「十二の恋の物語」からの流れを踏まえ(あるいは前後して)、フランス文学の中の一つと捉えている節がありますので、「トリスタン・イズー物語」とします。

トリスタンとイズーに関する物語は知ってはおりました、どこかで読んだことはありました。「中世騎士物語」にそういう物語が組み込まれていたように思われます。

ですが、細かいところは全然知りませんでした。本作を読む前に「12の恋の物語」を読んでおりましたので、まずはそのしっかりとした物語性に驚きました。登場人物の心情や心理もしっかりと描かれており、短編物語詩との違いをまざまざと見せつけられました。

「古典」を読むことの面白さを思い出したので、この前後から古典を読むことが増えました。

 

イリヤの空、UFOの夏

僕がラノベを読み始めたのは、もっと後でした。「ハルヒ」が何巻か出て、「シャナ」も何巻か出て……という時期。

本作は、ラノベにおける、古典的作品です。2002年頃に連載され、文庫化に至った作品です。

表現の所々に古さを覚えることはあります。ですが、セカイ系というジャンルを語る上で外せない要素や設定は、しっかりあります。読んでいて、気持ち良かったです。

最終巻である四巻に差し掛かる時に、……これ、もしかして、セカイ系じゃないか? と気づいてしまい、途端にメタ読みをしてしまったので、四巻が一番楽しく読めなかったのですが、これは僕のせいです。作品に罪はありません。リアルタイムに読んでなかった僕が悪い。

後にセカイ系という言葉でまとめられる作品の諸要素が、本作品には散りばめられてました。セカイ系の先駆けですね。

「古典」を読むのは、やはり面白いです。新しい発見、再発見がありますので。

 

60年代や70年代の日本の文学を、僕はほとんど読んでません。三島由紀夫や川端康成は辛うじて読んでいるかな? という程度です。

所謂、内向の世代や第三の新人等々の時代を全く読んでません。読んでみようと思ったことは度々あるのですが、どうも肌に合いません。

小説で書かれることが、私的過ぎる印象があり、自分(読者としての自分ではなく、生活者、普段暮らしている自分)が読んで良いものではない、という意識が働いてしまいます。

それでも読まず嫌いは良くない……と思い、このジャンルは確か小学館が色々と出版していたなぁ……と本屋を巡っていた記憶を頼りに、本作が良いと友達に教えてもらい、手に取りました。

90年代と新しい時代の小説であり、近未来が舞台であり、本来の狙いとはズレていると思われますが、読まないよりは良いと思われますし、良い物語だったのでチャラです。

重厚な、しっかりとした構成の骨太な長編小説でした。「光」という単純でシンプルで素っ気ないように見えるタイトルですが、読み終えると、納得しました。

物語以外に目が見張った部分があり、風景や都市の描写が今まで読んできた作品と明確に違うな……と思いました。

自然と人生」や「武蔵野」等々により、上手く描けたことによる効果は理解していたのですが、それらの作品の描写はどこか「静的」でした。人間が見聞きしているものを描写しているという感じです。

本作に出てくるいくつもの風景、都市の描写は「動的」でした。近未来を舞台にしているから実際に風景や都市が動いている場面を描写しているというのではなく、時間と空間の流れを都市や風景描写の中に感じるということです。

 

ギリシャ神話 テーバイ物語

間違って買った本です。「十二の恋の物語」の解説に、

スタティウスの「テーバイス」を原典にした「テーベ物語」

とあったので、気になるなぁ……と思って探したのですが見つけられず、これか……? と疑いながら買いました。

求めていた本と違ったのですが、「イリアス」や「オデュッセイア」が好きなので、結果として読んで良かったです。

テーバイという国を巡る神々と人間の物語。ハルモニアの首飾りによって連鎖される悲劇。

趣味に合っていて、最高でした。「オイディプス王」や「コロノスのオイディプス」で舞台になっている国、その戯曲の前後の物語、出来事だったので馴染み深いものでした。

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