はじめに
僕は、アマチュアの小説家として活動しながら、2026年からは、ひとり出版社「出藍文庫」として活動することを考えている。
日々小説を書き、WEBで全文を無料で公開しながら、読者と直接つながる場所を自らの手で作ってきた。
そんな僕だが、ひとり出版社の起業を考える前に、Kindleによる出版物の販売を考えたことがある。が、Kindle出版は見送った。
Kindle出版という選択肢を採用していない理由を語る前に、まずはKindle出版とは何か、どのようにして収益が得られるのか、そして出版方法について丁寧に解説しておきたい。
Kindle出版とは?
Kindle出版とは、Amazonが提供する電子書籍プラットフォーム「Kindle Direct Publishing(KDP)」を利用して、自身の書籍を電子書籍として出版する仕組みのことだ。登録は無料で、出版した電子書籍はAmazonのKindleストアに並び、世界中の読者に購入される可能性がある。
出版方法:ステップバイステップで解説
1. KDPアカウントの作成
Amazonのアカウントとは別に、KDP専用の著者アカウントを作成する。銀行口座や納税者情報の登録も必要になるが、日本に住んでいる個人でも問題なく登録できる。
2. 書籍データの準備
- 原稿データ:Word、EPUB、PDF、またはKindle Create対応形式で用意する。レイアウトの崩れが少ないEPUBや、Kindle Createで整えたデータが推奨される。
- 表紙画像:推奨サイズは2560×1600ピクセル以上。JPEGまたはTIFF形式で提出。
3. 書籍情報の登録
- タイトル、著者名、シリーズ名などの入力
- 説明文(あらすじ)の入力
- キーワードとカテゴリの設定:検索されやすさを左右する重要な要素
4. 価格設定とロイヤリティの選択
価格帯に応じて、35%または70%のロイヤリティが選べる。70%を選ぶ場合、一定条件(価格が250円〜1250円、Amazon独占販売など)を満たす必要がある。
5. KDPセレクトへの登録(任意)
Kindle Unlimited(定額読み放題)やKindleオーナーライブラリの対象にするための制度。登録すると、ページ単位で収益が得られる。
6. 審査と公開
提出後、Amazonによるコンテンツの審査(通常24〜72時間)を経て、Kindleストアで販売が開始される。
Kindle出版で得られる収益の仕組み
一冊売れた場合のロイヤリティ
価格設定に応じてロイヤリティ率が変わる。たとえば、400円で販売し、70%のロイヤリティが適用された場合、280円前後が収益となる(配信コスト等を差し引く)。
Kindle Unlimited(KDPセレクト)での収益
読み放題ユーザーが自著を読んだページ数に応じて収益が入る。1ページあたりの単価は月ごとに変動し、おおよそ0.5円前後(2025年現在)である。
その他の利点
- 在庫不要:紙の印刷や在庫管理が不要。
- 即時修正可能:内容や価格をすぐに変更できる。
- 海外展開も簡単:日本だけでなく、世界中のKindleストアに一括で配信可能。
それでも僕がKindle出版を選ばなかった理由
Kindle出版は非常に優れた仕組みであることは間違いない。だが、出藍文庫では、出版物はすべて公式サイトで全文無料公開している。
そのため、Kindleで出版しようとすると、
- Kindle独占販売要件(KDPセレクト)を満たせない
- すでに無料で公開している内容をKindleで販売するのは不誠実に映る
- 利用規約違反になる可能性すらある
という懸念があった。
ライトノベルやなろう小説などは読まれる可能性はあるだろうが、純文学は読まれるのだろうか、という疑いがある。Kindleを使用している僕は、大手出版社が販売しているKindle版を購入しているが、他はサンプルでも目を通したことはあるのか? と自問してみると、Kindle出版じゃないといけない理由がない。
出藍文庫の理念として、文学に対して自分ができることは何か? があり、文学作品を無料で広く届けるという姿勢を貫いている。紙媒体の販売においても、事前に公式サイトで全文を公開してから、読み手に選んでもらう形を採っている。
結び:選択の問題として
Kindle出版は、収益性や手軽さ、流通の広さなど多くの利点がある。特に、読者を多く獲得したい、印税収入を得たいという目的がある書き手には非常に向いている。
一方で、僕のように、ひとり出版社として独自ドメインのもとで読者と丁寧に関わりたい、作品を全文無料で届けたいと考える場合には、Kindle出版と相性が悪くなることもある。
出版形態に正解はない。自分のスタイルに合った形を選べば良い。この記事が、その選択の一助となれば嬉しい。