社会人になってからの出会いは新しいものもあれば、再会もあります。そんな出会いと女性同士の出会いをまとめた短編集。
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・「エチュードを弾くために」
――最後にあったのは、高校の卒業式だっただろうか。安井ははっきりと覚えていないが、丸岡が具体的な年数で答えているのならば、あの日以来なのだろう。
安井にとってしてみれば、丸岡と別の道を歩んでからの日々は辛く、苦しい連続の始まりだった。安井はピアノを続けるためにも音大へと進学し、丸岡はピアノを辞めて医科大へと進学した。――
社会人になってから再会した二人のやり直しを描く短編。
・「残り430ml」
――「お久しぶり……です?」
そういうふうに挨拶するのが正しいか分からなかったけど、私とこの人の間には、おはようございます、と言うよりも適切だと思った。事実、久し振りだった。社会人として働く直前にこの家への引っ越しを手伝ってくれた時以来のような気がする。
でも、女の人はそんな数年の隔たりを感じさせない。まるで、昨日も会っていたように言う――
社会人になってから再会した二人のこれからを描く短編。
・「木曜日の使い方」
――「ワーカーホリック気味のあなたを救っただけ感謝して」
「別にワーカーホリックじゃないけど?」
「有給何日残ってんの?」
「残り十七」
「立派なワーカーホリックよ」
「まだ六月だからよ」――
社会人になってから出会った二人の平日の使い方を見つめる短編。
・「理由を答えよ」
――初めて話した時、お喋りは嫌いです、と言い切って本を読み始めた仏頂面を、私は未だに容易に思い出せる。こんなに分かりやすく他人へ嫌悪感を示す年下の先輩がいることを、はじめて見たから。――
社会人になってから出会った二人のこれからを描く短編。