ピアノを巡る三つの物語

エチュードを弾くために

――「……私、あなたはピアノを弾き続けると思っていたの」――

ピアノ調律師として働く安井は、学生の頃の知り合いでありピアノを辞めて医者になった丸岡みゆきから病院のピアノの調律を依頼される。過去を見つめ直す短編。

アンダンテの速さ

――ピアノの音を悪くしてほしい。
安井千歌は依頼文を読んで、そう解釈した。音大を卒業して働いたピアノメーカーの頃も、退職してフリーとして活動している今も、音を悪くしてほしいと思わせる依頼を受けた覚えはない。――

何のためにピアノを弾くのか? ピアノ調律師として働く安井へと訪れる、ピアノを弾くことを巡る中編。

モデラートの生き方

――「あなたを待っているのは、ここのピアノじゃないでしょう?」――

ピアノを弾き続けることとやめること。岐路に立つ女子高生に、ピアニストではない調律師である安井が送る言葉とは……。未来の向けて歩み出す短編。