「私はあなたのことが好きです」、どう伝えますか? 大学生の男女の恋愛を描いた短編集。
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・「月の明るい夜に」
――地上に戻ってくると満月の優しい光が、二人を照らす。ミルク珈琲で暖かくなった斉藤はコートだけを羽織り、赤いマフラーは肩に掛けているだけだった。
「月が綺麗ですね」
斉藤の口から零れた言葉に、村松は足を止めた。先を歩く斉藤の足音だけが夜道に流れる。斉藤は着いてこない村松を不思議に思い、立ち止まって振り向く。先程よりも赤い顔をした村松が立っている。――
フランス文学とロシア文学を専攻している大学生の男女の夜を描く短編。
・「来年の思い出」
――橋の向こうに広がる夜空に、月が見えた。雨で洗い流された夜空に輝く月は綺麗だった。
我、君を愛すという英文を、夏目漱石が月が綺麗ですねと翻訳したことがあるという俗説を思い出した。――
大学最後の花見会場を探す夜を描く男女の短編。
・「63円の縁」
――月が綺麗なので、ふと早川さんのことを思い出しました。だから、書こうと思いました。バイトとか色々任せちゃって、済みません。お陰で良い年末年始です。ありがとうございます。返事待ってます。住所は表と違うので、下記まで。ところで、初詣って行きました?――
年末年始で会えない大学生の男女を繋げる縁を描く短編。
・「スイーツを食べるタイミング」
――冬の空が澄んでいること、星が綺麗なこと……そういう冬の夜空の美しさを教えてくれた小畠くんに、月が綺麗ですねって言っても、私の本当の気持ちは伝わらない。――
朝に出会う大学生の男女の関係を描く短編。PDF版は改題し、改稿しております。