・「ブルーに似る?」
由香はその色彩を聞いた時、そういうふうに乱暴にまとめてしまう人もいるのだと驚いたと同時に、怖くなり、自分にはない感覚を持ち合わせている人だなと少しだけ楽しく、喜びを見出してた。なにそれ、と恥ずかしそうに笑った記憶が、昨日のことのように蘇る。
ある夏の休日の早朝に、眠れずに目覚めた坂本由香は、貴重な休日の過ごし方から、恋人である井口大助との感覚の違いを思い出す。午前四時が夜か朝か。煙草の煙は白か青かそれとも紫か……。独りの時間と寂しさを描いた純文学恋愛短編。
・「モデラートの生き方」
コンクール当日になれば、彼女はきっと今まで通りの実力を発揮して、ピアノを弾くだろう。それで良いのかもしれない。ほんの少しと寂しさと虚しさを味わう引き換えにして。
ピアノ調律師として働く安井は、母校からピアノの調律を依頼される。そこで一人の女子生徒と出会う。社会人と女子高生の交流を描き、続けることの意味を問う純文学短編。
・「割れた唇」
十八歳の夏を迎えても、コンビニでお酒も煙草も買えることはなかった。選挙権とか結婚の権利も与えられたらしいけれど、それを行使する機会はまだない。つまりは、十七歳の時と何も変わることはない。
18歳で成人を迎える高校三年生のあたしは、受験勉強を勤しむ石田との会話に揺れる。恋と将来、責任の重さを前に戸惑う心を描いた青春短編。
・「星のキャンバス」
開催中は、何度も足を運ぶほどに気に入っている。シャッターを切るのとは違う、一枚の絵としてキャンバスに切り取ったあの情熱的な絵を。肉眼で見たら、細い糸のような白鳥座カッパ流星群の動きも、しっかり描かれているあの油彩画。あの絵の作者もきっと星が好きなのだろうと思うと、自分のことのように嬉しくなる。
天体観測を趣味にしている「私」と美大生の孤独を描く学生GL短編。チャットGPTとの共作。