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今回はそうしていただいたギフト券で購入した本や流れで読んだ本などの感想について書いていこうと思います。
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2025/05/02 現在、上記のご支援は受け付けておりません。
大江健三郎は「万延元年のフットボール」を読んだ時、なんだこの作品? なんだこの強烈に読みにくい文章は? と戸惑いと驚きと疲れを覚え、そこから、なんだか難しいことを難しいままに書く作家という積極的に読むことはないだろう位置にカテゴライズされました。
それでもこうして読むことになったのは、死者の奢り・飼育などの初期の作品は、そういう難しい作品ではないと友人から教えていただいたためです。
確かに、「死者の奢り」も「飼育」も難しい作品ではありませんでした。「死者の奢り」は、サルトルなどの実存主義の香りが漂わせる調子で、賢い大学生が賢いままに書いた短編の印象を懐きました。
物語の中心に添えられているであろう「死者」がどれほど物語や登場人物に関わってくるのかと思いましたが、あまり関係がないように映りました。暗喩的に、あるいは作品の雰囲気や世界観を構築するために、物語の始まりから終わりまで関わっているのかもしれませんね。
「飼育」は「死者の奢り」で覚えた、ある種の不満足や読了後の消化不良感などを吹き飛ばしてくれた作品でした。短編として必要な作品の全てが揃っている……と思わざるを得ませんでした。
凄まじい完成度の高い作品。作者が描きたい作品の世界観、物語の展開、登場人物同士の関係性……全てが過不足なく揃っており、ただただ上手い……凄いな……という感動と興奮を覚えました。
社会(戦争という社会的それ)の余波を受ける「社会」から隔絶された村で起こる一連の出来事は、今後の大江健三郎という作家が描く作品のテーマ、文学的主題を鮮やかに書き出しております。
これは改めて買った本ではありません。ですが、最近読んだ本ですので、こうして加えております。
「死者の奢り」の中で、
「え? アルバイト」と教授は横に開いた血色の良い耳を振りたてていった。「君は、ここの学生なの?」
「ええ、文学部です」
「ドイツ語?」
「いいえ。フランス文学科にいます」
「ああ」と満足に耐えられない調子で教授はいった。「卒論は誰を書くの?」
僕はためらってから、思い切っていった。「ラシーヌです。ジャン・ラシーヌ」
教授は顔中、皺だらけにして、子供のようにだらしなく笑った。
「ラシーヌをやる学生が死体運びとはねぇ」
と語られておりました。
ですので、読みました。
悲劇を描かれた両作品ですが、全てに迸っている暗喩が最高過ぎて、夢中になってしまいました。原書で読んでいたら、もうこれは全て韻文で書かれているのだろうな……と悔しさを覚えながら。
話の筋自体は至ってシンプルな一方通行の報われない恋愛ものなのですが、登場人物の心理描写の描き方、台詞回しが気持ち良い。ちゃんと観劇したい作品です。特に、「フェードル」。
「はしがき」に書かれていること全てに、同意を示せました。下記のリンクの試し読みから、「はしがき」が読めます。
最初から最後まで繰り返し読むこともできるでしょうし、この本の中で気に入った詩・作者の詩集を買うこともあるでしょう。
作者・題名索引の他に、テーマ索引があるのも良いです。自然(生きる喜び・不思議と神秘)や地理(日本各地・海外・山)等々。
日本の詩が気になるけど、どれが良いのだろうか……と悩む方にとりあえずこれを薦めたいってなる一冊です。
「箱の中のあなた 山川方夫ショートショート集成」(著:山川方夫 編:日下三蔵)
ショートショートという言葉で、僕を含めた多くの方はきっとおそらく星新一さんが描くような作品を思い浮かべることと思います。
すなわち、数頁でまとめられた、上手いオチのある作品。
この集成のショートショートはそういう作品が全てではありません。そういう作品の方が少ないかな、という印象すらあります。
ならば、どういう作品が多いのかといいますと、「掌の小説」(著:川端康成)で描かれているような作品の数々です。
O・ヘンリーの短編小説で見聞きしたことがあるような作品と言い換えることができます。
サキの作品集では味わうことは少ないショートショートです。