三年間、隔週で一万字の小説を書き続けて気づいたこと

小説を書き続けるための備忘録です。

■ はじめに

2022年から、隔週で一万字前後の短編小説を書き続けてきました。 きっかけは、書きたい話があったから。特別な決意や構想があったわけではありません。 ただ、書いて、出して、また書いて── それを3年近く続けてきたことに、ふと気づいたのです。

ここで一度、この三年間の執筆の記録と、その中で起きた変化や気づきを、まとめておこうと思います。


■ 習慣としての執筆に気づいたとき

2023年に最初の短編を書いたときは、まだ「隔週で書こう」と決めていたわけではありませんでした。 当時は公募原稿に向き合っていて、肩に力が入りすぎていた時期。 気楽に書こうと思って、一作短編を書いたのがきっかけでした。

その一作がこちらです: → エチュードを弾くために

気づけば、二作、三作と書き進めていて、 「二週間という期間が、無理せず書き上げられるペースになっている」と実感しました。 意識的に始めたわけではなく、無理せず、自然に続いていたのです。


■ なぜPDCAを意識するようになったのか

2024年に入ってからは、ただ書くだけではなく、「書いたあとにどう活かすか」を意識するようになりました。 きっかけは、公募原稿を一度書き上げたあとに、改稿を重ねていくことで、作品が確実に良くなっていく手応えを得たことです。

それまでは、作品が「完成」した時点で終わりだと思っていたのが、 改稿を通じて、「作品は直せる」「もっと届く形にできる」と感じた瞬間がありました。 そこから、隔週で書いている短編にも、“書いて終わり”ではなく、“次に活かす”という視点を持ち込むようになりました。

その年の公募原稿: → アンダンテの速さ
CとAを考える起点となった短編→ スイーツを食べるタイミング


■ Notionでの創作管理

こうした振り返りは、Notionのボードビューで「一作=一カード」として記録しています。 以下はその一例です:

書き上がった作品はこちら→ 明日のことは考えないように

notionボードビューの中身
Notionで作品ごとに 「コンセプト」「主題」「プロット」「振り返り」を記録しています。 一作一看板でボード管理しながら、執筆内容と変化を俯瞰しています。

さらに、全体の執筆の流れも「執筆中/プロット/振り返り」などに分類して、ボード形式で整理しています。

notionボードビューの全貌
こうした振り返りは、Notionのボードビューで「一作=一カード」として記録しています。

視覚的に進捗や蓄積を確認できるようになり、PDCAの「評価」と「改善」がやりやすくなりました。


■ 年間の集計(2023〜2025)

【2023年】

  • 書いた作品数:24本
  • 公募原稿:1本

【2024年】

  • 書いた作品数:27本
  • 公募原稿:2本

【2025年(5月時点)】

  • 書いた作品数:8本

■ 執筆環境と時間の確保

2023年は比較的安定しており、「一日二時間で3000字書く」というルーティンを継続していました。 2024年はまとまった時間の確保が難しくなり、スマホや短時間の集中を活かす形で捻出。 2025年現在は出版準備と並行して、「とりあえず一日で3000字を書く」という最低限のペースを守る形に。


■ 公募原稿との並行スケジュール

方向性やキャラクターは短編の中で確立されているため、 プロットの練り直しと構成の再設計で中編化しています。

書かない日々が続くとそわそわして、むしろ落ち着かなくなってしまった。 そこからまた自然と隔週更新を再開し、そのときに書いたのがこちらです: → 待ち時間

公募原稿として並行している時のスケジュールは以下の通りです。大体六月頃から九月末まではこんなふうに進行させています。

第一週 公募原稿
第二週 短編
第三週 公募原稿
第四週 短編

この期間の短編は他の月に書く短編と比べて、クオリティーが落ちます。それでも書き続けたのは、自分の最低がどれくらいなのかを知るためでもありましたし、公募原稿の息抜きでもありました。この時期の短編は自分が普段からよく書くものが多くなります。社会人女性同士の関係、恋愛、旅行、朝や夜の一時、会話がメインになる……。

その時期の作品がこちらです。→ 寂しさを紛らわすために


■ 書き続けて気づいたこと

  • 自分が書けるペースが分かった。
  • 自分の表現や描写の癖が分かった。
  • 書いている時に詰まったり、迷いやすいところがどこなのか分かった。
  • 書かずにいると、そわそわして調子が崩れることも分かった。

■ 書き続けて生まれた変化・手応え

文學界新人賞の二次選考を突破。名前と作品タイトルが文學界に掲載されたことは、 この習慣を続けたからこそ掴めた手応えだったと思っています。


■ ネタ切れとAIとの対話

完全に手詰まりになったとき、ChatGPTにネタ出しを頼んだこともありました。 反射板のように活用することで、自分の“書きたい軸”を逆照射する形で浮かび上がらせていました。

そのやりとりをもとに書いたのが以下の作品: → 二十一グラムの行き先

元になったプロット:

プロット3: 「秘密の庭」

概要: 古い屋敷に住む美術教師の佐紀は、週末ごとに庭いじりを楽しんでいた。ある日、隣に引っ越してきた若い女性、遥が庭を見に来るようになる。佐紀は遥に少しずつ心を開き、自分の秘密の庭を見せるようになるが、そこには佐紀が抱えていた悲しい過去も含まれていた。二人は共に庭を手入れしながら、お互いに対する想いを育んでいく。

展開
• 日常の中で徐々に深まる関係。
• 庭というメタファーを通じて、成長と再生が描かれる。
• 物語の終盤で、二人は過去を乗り越え、新たな未来を共に歩むことを誓う。

■同じ登場人物達を再登場させる

短編は大体、二人の登場人物で物語を展開させます。短編Aでは、登場人物Aの視点で別の登場人物であるBとの関係を描くことになります。
短編Bでは、短編Aで登場したBの視点で、登場人物Aとの関係を描きます。
そんなふうにして、一つの作品を書き上げます。